就活は効率的・効果的に!

大学4年のうち、1年以上を就活に捧げる。大学は就職予備校ではありません。そんな本末転倒な状況を打破するために、効率的効果的な就活をお勧めしたい。そんなの思いから、人材業界に関わって30年の筆者が、今までのノウハウ・経験から、就活生に役立つ情報を提供します。

就活で一発逆転を狙いたいなら・・・

新卒での入社は一生で一度。
しかし何らかの事情で、うまく内定を獲得できないケースもあるでしょう。
そんなとき、一発逆転の手立てはあるのでしょうか?

発想を変えればあります!

就活後半から「誰もが憧れる企業」や「一度落ちてしまった意中の企業」に入るのは正直難易度が高いです。
ここは発想を変えて、10年後や20年後に「この会社に入ってよかったなぁ」「今受けたらとても入れないけど、あの頃だから入れたんだよなぁ」と思える会社を探すことをおススメします。


●ポイント
上記のような会社を探すために、下記の3つの角度で会社を探すことをおススメします。
1.早期退職・希望退職を行った直後の会社
2.不祥事を起こした大手企業
3.人材輩出企業出身者が創業したベンチャー(例:創業者が元楽天、元リクルート、元マッキンゼー、元サイバーエージェント・・)

※一発逆転を狙うには、リスクテイクが必要になります。
リスク回避の方法は、本文の最後に記載しましたのでご参照ください。


●ここから本文
1.早期退職・希望退職を行った直後の会社
かつては早期退職や希望退職(名称が異なるだけで、内容は同じです)などのリストラを行う会社は、経営的に危機を迎えた会社がほとんどでした。

しかし、2000年代前半(皆さんが生まれた頃ですね)に「ITバブル」なるものがはじけ、大手電機メーカーをはじめとする名だたる大手企業の業績が悪化し、早期退職を実施してから、リストラの意味合いは大きく変わりました。

このとき真っ先に大きなリストラを行ったのがパナソニックです。
創業者で経営の神様と言われた松下幸之助が「絶対に雇用には手をつけない」と明言していた同社が大規模なリストラを行ったことで、伝統的な大手企業がリストラをしやすくなったのです(それまでは「雇用に手を付けるのは社会的悪で、あくまで最終手段」という風潮でした)。

以来、企業が戦略転換や事業の統廃合を行う際、異動や出向で雇用を守るのではなく、中高年(多くは40~45歳以上を対象)をリストラすることが日常茶飯事となりました。

それ以前は「雇用に手を付けたリストラを行った直後は新規採用を控える」のが当然でしたが(「社員の肩たたきしながら、新しい人を採るのか! 雇用を守れ!」という批判があったため)、現在では「早期退職や希望退職を行いながら、新卒採用も同時並行で行う」企業も少なくありません。

ただ、リストラ中の企業は企業イメージも悪く、両親が反対することも多いため、「応募者が少ない」「内定辞退が多い」という悩みを抱えています。
つまり「通常では入社できないクラスの会社」が採用基準を下げたり、二次募集を秋採用・通年採用という名称で行っているため、採用されるチャンスが生まれてきます。

リストラを行うと、中高年社員の占めていたポストがポッカリと空いて30~20代の社員が昇進し、大きな仕事を任されます。つまり、新卒で入った後、「上が詰まっている」ことがなく、大きな仕事を任されたり、早期に昇進できる可能性も高くなるわけです。

10年~20年後、入社した会社がV字回復を遂げ、「あの時じゃなきゃ、入社できなかったなぁ」「中高年が少ないので、大学時代の同級生より早く昇進できた」なんていうケースも少なくありません。

では、リストラしている企業をどのように探せばいいのか?
方法は2つです。

日経新聞WEB版の「適時開示サービス」での検索
検索窓があるので「希望退職」「早期退職」などのワードで検索をすると、過去1年間で希望退職・早期退職を行った上場会社がズラリと出てきます。
これは上場企業が希望退職・早期退職を行う際には、必ず東京証券取引所に届ける義務があるからで、その内容が「適時開示サービス」に開示されるのです。ちなみに情報の出所の東京証券取引所のサイトにも「適時開示サービス」がありますが、過去1か月分しか検索できません。
日経新聞WEB版の適時開示サービスは同じ内容のものが1年分検索できるので、就活にはこちらの方が便利です。
ここに掲示されている企業の中から、自分の志望企業に近い会社を探してみてはいかがでしょうか?
日本経済新聞WEB版 適時開示サービス】

https://www.nikkei.com/markets/kigyo/disclose/

→検索窓に「早期退職」「希望退職」と入れて検索ください

②「不景気.com」でリストアップする
「不景気.com」という世にも恐ろしい名前のサイトがあります。
このサイトの「国内リストラ」のコーナーの「過去記事」をクリックすると、過去5年のリストラ企業の記事一覧が閲覧できます。
①の「適時開示サービス」と重複している内容が多いですが、各メディアの記事から情報を集めているので、上場企業以外の情報も入手できます。
【不景気.com 国内リストラ 過去記事】

https://www.fukeiki.com/restructuring/restructuring.html


※この記事ではわかりやすく「早期退職・希望対象≒リストラ」としましたが、リストラの本来の意味は「事業の再構築」です。その結果、雇用に手を付ける場合に「早期退職制度」「希望退職制度」という名称の人事施策を行います。本来の定義は「リストラ=早期退職・希望退職」ではありません。


2.不祥事を起こした大手会社
不祥事を起こした企業も、上記の企業と同様に、企業イメージも落ちますし、内定者のご両親が反対したりするので、「応募者が少ない」「内定辞退が多い」などの採用で悩みを抱える企業も少なくありません。

これは「1」に比べると数が少ないですが・・・。
過去の例で行くと、下記の企業が大きな不祥事を起こしています。
※小さい不祥事は数え切れに程ありますが・・・。
1988年:リクルート
2000~2002年:雪印
2004年:西武鉄道グループ
2006年:ライブドア(現:LINE)
2010年:大王製紙
2011年:オリンパス
2014年:ベネッセ
2015年:東芝
2019年:日産自動車

多くの会社は今では人気企業ですよね。
不祥事中に入社すると数年間は辛い耐える時期が続きますが、それを乗り越え回復することで企業基盤が強化され、優良企業となることも少なくありません。
※もちろん不祥事を起こし、そのまま衰退した企業も多いですが・・。

例えば、1988年のリクルート
当時のリクルート事件は政界を揺るがすほどの大疑獄事件に発展しました。筆者の友人のリクルート出身者に聞いたところ、当時からリクルートは人材採用に力を入れており、採用者のほとんどは難関国公立・早慶だったそうです。しかし事件直後はMARCH比率が高まったり、日東駒専クラスの入社者もチラホラいたとのこと。

株式投資の王道は「安く買って、高く売る」ことですが、就活でも「現在安値の会社入り、ビジネスマンとして脂がのってきたころに高値になっていそう」な会社を探すのも一つの手です。


3.人材輩出企業出身者が創業したベンチャー企業(上場していない会社に限ります

創業者が元楽天、元サイバーエージェント、元リクルート、元マッキンゼー、元DeNA。人材輩出企業と言われる企業の出身者が創業したベンチャー(未上場企業)もねらい目です。

創業数年間は知名度が低いため、応募者もそれほど多くありません。
こうした会社に新卒で入社すると、2つの大きなメリットがあります。

①ものすごく早い成長(ハードだけど・・)
この類の会社は「スピード」ロジカルシンキング」「新規事業を見つける情報感度・アイデア」を大切にしています。
物凄く忙しくて、脳みそがちぎれるくらいタフな働き方を求められますが、ビジネスマンとしての基礎力が確実に身に付き、場有髪的に成長できます。

「人材輩出企業出身者が作ったベンチャーも、そうでないベンチャーも同じじゃない?」と思われるかもしれません。

違いは一つ。
上記にあげたような人材輩出企業には、優秀な人材を輩出できる仕組みや文化が必ずあります。そんな企業の出身者が作ったベンチャー企業には、出身企業の文化が今の会社にそのまま引き継がれています。

会人基礎力のついたビジネスマンが転職するならどちらでもよいのですが、社会人未経験のあなたが入るなら、人材育成・教育に力を入れていれており、成長できる土壌がある会社の方がよいと思います。

②億万長者も夢ではない!
ベンチャー企業の創業者の多くは「上場」か「事業売却」により、大きな資金を獲得すること(露骨な言い方をすると、億万長者になること)を夢見ています。
※ちまたでは「イグジット(出口)戦略」とカッコつけた言い方をしています。

ベンチャー企業に入るなら、「社員持ち株会」があることを確認しましょう。これがないと、上場しても儲かるのは社長と一部の役員だけ。

しかし、「社員持ち株会」があれば、一般社員でも株式上場前に安値で株を買えるため、上場と同時に億万長者・・とまではいかなくても、上場企業で定年まで勤めあげた退職金くらいのお金が転がり込んでくることも夢ではありません。


4.★重要★リスクについて
通常の会社選びをして入社しても、その会社が業績不振に陥ったり、倒産することはもちろんあります。

しかし、ここで紹介する企業選びは、その可能性がさらに高まります。
「本当にこの会社で大丈夫なのか」というリスク管理が非常に重要となります。

「1.早期退職・希望退職を行った直後の会社」の場合
このケースの場合は行ったリストラが、「前向きのリストラだたのか、後ろ向きのリストラだったのか」を判断する必要があります。
時代や技術の変化に合わせ『事業の選択と集中』を行うためのリストラであれば、前向きなリストラです。
しかし、本業が厳しく単に人件費を削らないと生き残っていけないリストラは後ろ向きです。

この見分けは難しいですが、一つの目安は直近2年間の決算です。
企業は2年連続で赤字決算を計上すると、メインバンクの銀行からリストラを提案されるといわれています。
上場企業なら公式ホームページ(採用ホームページでなく、企業ホームページの方です)の「IR情報」というコーナーを見ると「決算短信」という資料が掲示されています。この資料で2年連続で営業利益か最終利益が赤字なら、後ろ向きのリストラであることが多いです。

「2.不祥事を起こした大手会社」
このケースの場合は、不祥事を起こした後の対応が大切です。
不祥事を起こした時の正しい対応は「謝罪・原因究明・再発防止が3点セット」と言われています。
この3点をきちんと表明している企業なら、不祥事は一過性で終わるでしょうし、曖昧にしている企業はそのまま奈落の底に落ちていく可能性があります。
不祥事を起こした際は、企業ホームページに謝罪や経過報告が掲載されますので、上記3点セットについて前向きに取り組んでいるか否かが、企業のその後を見分けるヒントとなります。

「3.人材輩出企業出身者が創業したベンチャー
ベンチャー企業は社長が命。
ベンチャー企業といえばかっこいいですが、いわば中小企業です。

中小企業の良いところは「ボスを選べる(=変えられない)」点です。大企業では上司となるボスは選べませんし、社長も数年おきに代わることが多いです。

「社長を尊敬できるか」「社長と一緒に働きたいと思うか」が大切です。
創業者は外面はいいですが、社内では非常に厳しいことが往々にしてあります。少しでも「この社長のココがイヤ」と感じたら、避けた方が無難です。社内のコミュニケーションでは、そのイヤなところが増幅することが考えられるからです。


直近の業績等はそれほど気にしなくてもいいと思います。
ベンチャー企業の資金調達の方法はいくらでもありますし、そもそもベンチャー企業は1年先のことはわかりません(ベンチャーは「冒険」という意味です)。

こうした企業群を選ぼうとする方は安定志向ではなく、ビジネスで冒険をすることでワクワクドキドキしたい人のはず。「この事業は私が成長させる」という気概が必要なので、会社の将来性が不安で悩んでいる人にはこうした会社は向いていません。

-------------------------

「世界地図を逆さにし、上から見たらどう見える?」という話があります。
通常みている世界地図とは違う光景が見えるはずです。
(例えば、中国や韓国が太平洋に出ようとすると、日本列島ってホント邪魔なんだなぁ~、とか)
「視点を変える」ことの大切さを表すエピソードです。

就活がうまくいかない人は、視点を「今」から「10~20年後」に変えて、会社選びをしてはいかがでしょうか?