就活は効率的・効果的に!

大学4年のうち、1年以上を就活に捧げる。大学は就職予備校ではありません。そんな本末転倒な状況を打破するために、効率的効果的な就活をお勧めしたい。そんなの思いから、人材業界に関わって30年の筆者が、今までのノウハウ・経験から、就活生に役立つ情報を提供します。

「業種」で選ぶな!「 職種」か「社風」で選べ!

就活をする際、まず業種選びから始める方が多いのでしょうか?
実はそれは、あまりお勧めしない就活軸です。

結論から言うと、「職種」か「社風・人」で選ぶことをオススメします。

 

●この記事のポイント
・お勧めする就活軸①:「転職すること」を前提に、「職種」で会社を選ぶ。
会社の寿命は30年と言われています。
しかし、個人が働く労働年数は40~42年(今話題の「年金70歳支給開始」が現実化したら48年!)。
会社よりも個人のほうが長生きするので、ビジネスマン人生で転職を検討する機会も増えてきます。


その時に大切なのが「プロフェッショナルであるかどうか」。
とある業界に精通しているのもプロではありますが、一番ニーズがあるのが「職種のプロ」。
であれば、業種でなく職種で選ぶほうが、論理的な選択です。

・お勧めする就活軸②:「社風・人」で会社を選ぶ。
転職を前提にするのがなじめない人は、
「“どこ行きのバスに乗るか“ではなく、“誰とバスに乗るか」
で会社を選ぶことをオススメします。

社会的変化、技術的変化の激しい今、その会社の業種自体が変わることも少なくありません。
札幌行きのバスに乗ったはずが、突然行き先が福岡に変更になったら、
「札幌に行って、海の幸を楽しみたかったのに、話が違うじゃないか」となります。

しかし、「行き先はともかく、仲の良い友人と旅を楽しむことが目的」だった場合は、
バスの行き先が変わったとしても、それはそれで楽しいのではないでしょうか。

就活やキャリアも、言ってしまえば『人生の旅』。
考え方は変わりません。


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1.「会社より個人が長生き」する時代へ
(1)個人の労働寿命は、40~50年
現在定年は60歳。ただし、2013年から政府主導で定年後も65歳までの雇用維持施策が進められ、2025年にはほぼ義務付けられます。
これの理由は、お察しの通り年金受給開始の年齢を遅らせるためです。
少子高齢化が進む現在、年金の受給年齢を引き上げないと財政が破綻するといわれ、年金を払えるまで働き続けてもらわないと困るわけです。
※実は定年が60歳になったのも、皆さんが生まれる直前の1998年。
それまでは定年は55歳でした。

みなさんが50歳になった頃には、さらに少子高齢化が進んで年金受給開始が遅くなり、70歳や80歳まで働かなくてはいけなくなるかもしれません。
つまり、個人の労働年数は現在40年強、将来は50年を超えるかもしれないということです。

(2)会社の寿命は30年
会社寿命は30年説は、1983年に『日経ビジネス』誌が提唱し、以後ビジネスでは1つの定説になっています。

実際に東京商工リサーチの調査では2018年に倒産した企業の平均寿命は23.9年、
帝国データバンクの調査では37.16年と、ほぼそれに近い数字となっています。


「50年も、100年も続いている会社があるじゃないか」という声も聞こえてきそうです。
確かに同じビジネスで100年続いている老舗企業もありますが、企業経営は「環境適応業」といわれています。
企業は同じでもやっていることは全く変化し、社名そのものも変えてしまうことも少なくありません。

例えば、みなさんは今スマホで写真を撮っていますが、
昔は「専用カメラ」で写真を撮り、それをプリントして保存するのが当たり前でした。

それが1990年代にデジカメが普及しプリント需要が大きく減少、2010年以降スマホの登場で、写真プリントの市場はほぼ消失しました。

その写真プリントに欠かせなかったのがフイルムです。
このフイルム、日本ではコダック富士フイルム(当時の社名は富士写真フイルム)の2社がほぼ独占していました。
この2社のうち、コダックは変化に対応できず倒産。
富士フィルムは当時売上の2割、利益の6割をたたき出していた主力の写真プリント事業に見切りをつけ、医療・化粧品事業会社に生まれ変わり、いまだに優良企業です。
※コロナ治療薬のアビガンも富士フィルムグループが作っています。


「写真が好きだから、富士フィルムに入社した」人は、なぜか今は医薬品や化粧品に携わっている。それはまだいい方で、コダックに入社した人は職まで失っているわけです。

極端な例を出しましたが、身近な例ではみなさんが使っている「リクナビ」を運営するリクルートもそうです。昔は売上の大半を人材ビジネスが占めていましたが、今ではその売上比率は激減。ほとんどIT企業に近いです。

もちろん車一筋創業80年のトヨタ自動車のような例もあります。
しかし、ヨーロッパではガソリン車を禁止する動きも出てきています。電気自動車が主流になれば、トヨタも「大幅縮小」となるか「電機・ITメーカー」として生まれ変わるか、ということにもなりかねません。

こうした状況を踏まえて、お勧めする就活軸が、下記の2点です。


2.お勧めする就活軸 その1:「転職すること」を前提に、「職種」で会社を選ぶ。
(1)「業種」は消失・変化するが、「職種」は進化するだけ
前置きが大変長くなりました。
「業種」は社会・技術の変化で「消失・変化」することが少なくありません。
しかし「職種」は消失はしません。「進化」するだけです。

よく「IT、特にAIが普及すると、営業がいらなくなる」と言われていますが、そんなことはありません。
「ITやAIを活用できる営業マン」への進化が求められるだけです。
人事・総務・経理・企画・・・、どの仕事もなくなるのではなく、進化するだけ。

社会人になっても日々勉強し、成長していくことが求められるわけですが、それはスポーツの世界でもタレントの世界でも同じ。
社会の変化に対応できなければ、個人の価値はドンドン落ちていきます。

例えば、サッカー。
昔は「一芸に秀でた選手」が重宝されていましたが、現代サッカーでは、オールラウンドプレイヤーが求められています。

つまり、FWにも守備が求められ、DFにも攻撃力が求められるようになり、効き足以外でもシュートが打てたりと、自分のスキルを磨かねばなりません(欧州で活躍する久保建英選手はこうした能力が秀でているといわれています)。
環境の変化に適応できる選手が、生き延びていくのです。

しかし、サッカーがなくなったら、サッカー選手はどうなるでしょうか?
似た競技とはいえ、ラグビーアメリカンフットボールですぐにプロとして活躍するのは難しいはず。
(昔、バスケの神様と言われたマイケル・ジョーダンプロ野球に転身し話題となりましたが、鳴かず飛ばずでした・・)。

つまり、「何かの職種・分野のプロになる」ことが長いビジネスキャリアで大切だと考えます。

2.お勧めする就活軸 その②:「社風・人」で会社を選ぶ
冒頭で「“どこ行きのバスに乗るか“ではなく、“誰とバスに乗るか」という話をしました。
会社の社風・雰囲気は、人の性格と同じで、変えることは難しいです。
会社のことをCOMPANYと言いますが、語源は「仲間」です。

どんな仲間と働くのか、というのは「会社」という言葉の成り立ちから考えても、正しいわけです。

そもそも、「自己分析」や「業界研究」をどれだけしたところで、机上の空論。
実際働いてみて「気づくこと」「発見すること」そして「変わっていくこと」がたくさんあります。


であれば、大まかな就活の軸だけ決めて、あとは「自分が一緒に仕事をしていきたい人たちか?」という軸で選んでもいいと思います。
一日24時間のうち、睡眠時間を引くと16時間。そのうちの8~10時間は会社で仕事をしているわけです(ハードな会社だと、12~13時間)。
一日の大半をギスギスした人間関係の中で働くのは、さすがにキツいです。

「仕事なんて、やってみないとわからない」「日本では、会社の都合で職種転換(配置転換)は日常茶飯事」と割り切って、『仲間』を就活の軸にするのです。

インターンシップなどで仕事体験もできますが、しょせんは学生集めのために、おいしい仕事を少しやらせてもらえるだけです。
であれば、インターンで見るべきは社風や仕事の進め方。
「上司の確認を取りながら、仕事を進めるのか(慎重派向き)、自分の裁量でどんどん仕事を進められるのか(自信のある人向き)」
「職場(特に上司・部下)のコミュニケーションは?(部下が上司に報告するシーンを複数社で比較すると、上下関係の厳格さ・フランクさがわかります)」
「社員たちがどんな腕時計をしているか(給与水準やフランクさがわかります)」
・・・・・

インターンシップで見るべきは、仕事ではなく、「将来の仲間」です。
※一か月以上の長期インターンはこの限りではありません。


ここまでお読みいただいて、ありがとうございます。
就活本や就活サイト、就活塾で言われていることは、みんながやっている就活方法です。
同じ方法で就活をするということは徒競走と同じで、「足の速い人は勝つし、足の遅い人は負ける」だけです。
差別化するには、逆張りです。
是非、人とは違った視点で就活することをオススメします。